農村の疲弊 impoverishment of rural communities 2003 8 28

 日本では、今年は、冷夏により、稲作の不作が問題になっています。
こう聞くと、国民は、お米の値段を心配しますが、
この機会に、別の問題にも、関心を持って欲しいのです。
 実は、別に、最も大きな問題があります。
関東の農村で、こんなことがありました。
役所が、新しい道路を作る時、農地を買収することになりました。
しかし、農村では、これが大きな問題を引き起こしました。
つまり、運よく農地が買収にかかる農民と、
運悪く農地が買収にかからない農民のとの間で、嫉妬という争いが起きたのです。
 なぜ、このようなことが起きたか。
これは、農村を歩けば、わかることですが、
農村においては、高齢化が進んでいるのです。
ある農村では、67才が最も若い農業従事者でした。
他の農村でも、似たようなものです。
 さらに問題なのは、稲作での赤字です。
農家の人が、スーパーで嘆いていますが、
このような値段で売られては、採算が取れないと嘆きます。
 では、どうしているか。
私が訪問した集落では、稲作の赤字を、イチゴ農業の黒字で、しのいでいるとのことでした。
 こういう状況なので、農地が買収にかかると、農民はうれしいのです。
この、農村の高齢化と、稲作の赤字は、大きな問題です。
もちろん、政治家も役所も、この問題を知っています。
 しかし、この問題を解決するには、大改革が必要です。
大改革すると、政治家も役所も、存在基盤が崩れますので、
見て見ぬふりをしています。お家芸の「先送り」です。
ともかく、補助金をばらまいて、農民の不満を抑えています。
 しかし、あと、10年もすれば、高齢化で、農村は崩壊します。
この時、どうするか。
お米は、海外から輸入すればいいと言う人もいます。
お米は、日本人の主食であるから、日本で作るべきであると言う人もいます。
 しかし、日本国内で、稲作という事業をすれば、赤字を覚悟しなければなりません。
稲作という事業の赤字を解消するには、
お米の値段を上げるか、
農地の耕作面積を大きくするというスケールメリットにするか、
どちらかです。
 スケールメリットを選んだ場合、農家個人ではできません。
法人組織が必要となるでしょう。
こうするには、農地の売買の自由化が必要なのです。
現在では、農地は農民にしか売れないという厳しい規制がかかっています。
 残された時間は少ないのです。
小作農を守って、日本の稲作を維持するには、お米の値段の大幅な引き上げが必要です。
スケールメリットにするには、農地の売買の自由化が必要なのです。
二者択一です。
 今までは、政治家も役所も、農民を補助金漬けにして、だましてきましたが、
農民の高齢化が進んでいますので、このような欺瞞は続けられません。